2024年春に、東京と大阪でブラジルのクラブチーム「クルゼイロ」のサッカーキャンプが開催され、参加した子ども達の中からMVPの選手と優秀選手と合わせて3名がブラジル遠征に参加した。「TOCA1…クルゼイロ育成施設」では、現地の選手と合同練習を行い、トレーニングマッチで同世代のブラジルの子どもたちとの対戦。プロのトレーニング施設を表敬訪問し選手や監督と交流。ミネイロンでの試合観戦。さらに今回、公式戦のエスコートキッズも体験させてもらう栄誉に預かりました。
クルゼイロのホームスタジアムである「ミネイロン」でブラジルリーグを観戦!
そこでクラブから急なオファーが。「一人、エスコートキッズをすることが出来るよ。ヨシなら行けるだろ。」物おじせずにブラジルに一番慣れているヨシをクラブが選びました。事前説明なくエスコートキッズを務めることに。ヨシも堂々と大役を務めあげました。監督やエースのマテウスペレイラに自ら握手を求めたり、ピッチの上でも怖気づくことなく。
日本人がこの役目を務めたことは史上無いのでは?素晴らしい体験をさせてくれたクラブに感謝です。(可能であれば全員をピッチに立たせてあげたかったです。。。)
2024年の夏休み、成田空港から出発!
今回は東京、大阪から3人の選手がブラジル・クルゼイロに挑戦することになりました。
小人数ですが、やる気にあふれる良い顔つきですね。
5年生のライキ、4年生のケンセイ、3年生のヨシです。
子どもたちが打ち解けるの早いですね。
たくさんの希望と少しの不安を抱いて、ブラジルに向け出発しました!
飛行機トラブル発生!
ブラジルに向かう機内で、急病人が出るというトラブルが発生してしまいました。
突如カザフスタンの空港に緊急着陸など、何度も!!プランの変更を余儀なくされてしまいました。
同行のヒロコーチは旅慣れています。こんな時でも落ち着いて対応。日本の親御さん、ブラジルのクラブ側ともコミュニケーションを取りながら、旅を進めました。
無事にクルゼイロのあるベロオリゾンテに到着。子どもたちも頑張ってくれました。
今回訪問したクルゼイロの育成施設「toca1」。育成のプロが私たちを待ち構えてくれていました。身体測定に体力・筋力テスト。これからのトレーニングの内容や強度を見極めるために実施しました。その数値をもとに、滞在期間に合わせたオリジナルのトレーニングのプログラムを組みます。我々のためだけにアレンジしてくれたメニュー。ブラジルなどラテンの国は明るくノリで決めている?それは大きな間違いであることを、改めて思い知らされました。
トレーニングは1日2部練習を組んでもらいました。これは我々のリクエストに応えてもらっています。日本人だけの技術に特化した内容と、ブラジル人選手を招待しての合同トレーニングです。ミナスジェライス州にある100以上クルゼイロのサッカースクールから、同年代のブラジル人選手が参加してくれるのです、実際にブラジルでプレーしている子ども達と練習を行うことが出来ました。ブラジル人選手は明るく陽気です。楽しく我々ともコミュニケーションを取ってくれます。ですがトレーニング始まった瞬間に目の色が変わります。サッカーに対しては本当に真剣なのですね。
隣のピッチでは、クルゼイロのU15、U17のトレーニングも行われていました。クルゼイロからは、世代別のブラジル代表をいつも何人も送り出しています。その中には今、FCバルセロナに入団が噂されているヴィトールホッキの姿もありました。現在トップチームでプレーしているステーニオやカイキの姿も。その彼らと一緒の時間を過ごせた経験は、日本のサッカー少年にとっては計り知れないほど大きな経験だったのではないでしょうか。
クルゼイロの選手のプレーは、シンプルでした。技術そのものは恐ろしく高いのですが、派手な技術は使いません。試合で必要なプレーを続けます。そして絶対に目の前の選手に負けない戦いも見せてくれます。一つのボールに対して執着心を持ち、勝負にこだわります。この熱にあふれ、真剣にプレーする姿を、我々も標準にしたいものです。
トレーニングだけでなく、対外試合も2試合しました。前半よりも後半、1試合目よりも2試合目と、どんどん選手のプレーはよくなりました。短い滞在時間ですが、見違えるように成長していきました。特に自分のプレーを出せるようになってきたことが、本当に大きな成長だと感じました。
ブラジルの育成年代では、ほぼ全員がフットサルを真剣にトレーニングしています。近年都市化やクルマ社会化が進み、ストリートでサッカーをすることがブラジルでも難しくなっています。その代わりにフットサルに取り組むことが増えているのです。
なぜ?フットサルに取り組むのでしょうか?ボール扱いが巧みになるから。それはブラジルのフットサルの一端にしか過ぎません。我々の想像をはるかに超えたハイレベルの内容に取り組んでいたのです。将来、サッカー選手としてのベースを作るためにフットサルがあるのです。
クルゼイロU11世代と合同で、フットサルのトレーニングをしました。普段、彼らが取り組んでいるものと同じメニュー。これが難しい。高いテクニックと、判断力、認知力、そして即興性が常に求められるです。正直、日本の子どもたちは混乱していました。ルールは分かっても、付いていけない。何をすればいいのか分からなくなってしまうのです。メニューのレベルとしては、日本だとU15,U18が対象になるくらいの複雑なもの。もしかすると大人でも思考が追い付かない瞬間があるのでは?と思わせるほどの高難度でした。ブラジルのフットサル、恐るべしです。
最後に試合をしました。トレーニングで取り組んだこと、今まで自分たちが培ったものの全てを出しました。でも前半は一方的にやられてしまいます。「失敗を恐れずに戦おう!」「仲間のために走ろう!」コーチの声掛けもあり、後半は少しずつ盛り返し、何点か奪うこともできました。その姿に、クルゼイロのコーチも驚いているようでしたよ!
最後には、クルゼイロのマスコットであるハッポーサくんと、ハッポジーニョくんが遊びにきてくれるというサプライズを、クラブが用意してくれていました。さっきまで戦っていたU11の選手と共に、記念撮影。日本とブラジルとの距離を越えた絆が生まれましたね。
ブラジルを深く感じるためのプログラムを、クラブが用意してくれました。
・フットサル
・フッチボレー
・カポエイラ
いずれも、ブラジルを語るうえで、ブラジルを深く理解するためには欠かせない要素です。
フットサル
幼少期にフットサルをプレーする。育成年代でも引き続きフットサルをプレーする。
今のブラジルの育成では、当たり前になりました。
フットサルで相手との駆け引きを覚え、テクニックの活かし方を学ぶ。そしてグループ戦術も学ぶ。
ブラジルのフットサルは世界でもトップクラス。
ミナスジェライス州内でもレベルの高いフットサルクラブに、一日参加を許されました。
トレーニングにゲームに、ブラジルの少年と全く同じメニューを、同じ強度でプレー。
最初はフットサルボールのサイズ(日本でいう2号よりも小さいサイズ)に戸惑っていましたが、
徐々に慣れていき、同世代の仲間とも打ち解け、素晴らしい時間を過ごせました。
フッチボレー
ビーチに模したさらさらの砂の上で、バレーボールを足でプレーします。
ブラジルでは、定番のスポーツです。
少し柔らかいボールで(日本のミカサ製)、手を使わずに浮き球をプレーしあいます。
こけても、ボールがぶつかっても、痛くありません。
恐怖を取り除かれたおかげで、浮き球の対応がみるみる上達。
ラリーが続くようになっていきました!
カポエイラ
ブラジルに伝わる格闘技です。
本物の「ジンガ」を体験。裸足になって、音楽を体で感じ、体を揺らしてステップ。
タン、タン、タン。タン、タン、タン。
受け身に、攻撃、二人での演舞。
複雑な動きを、丁寧に指導してくれたので、なんとか子どもたちもマスター。
日本に伝わっているジンガと、ブラジルでのジンガとの違いも肌で知ることができました!
ブラジル人プレーヤーの良さは何だろう!?クルゼイロ育成の悩みの一つだそうです。
トレーニングが高度化され、サッカーが戦術的になりすぎている。その環境で選手は育つが、ブラジル人選手の特徴や良さを持った選手が出てこないのでは?との課題を、クラブは感じています。少しでも昔のブラジル人選手が持っていた柔らかい発想や、ジンガ、相手との駆け引きを身につけてほしいそうです。
その一つの解決策として、ストリートサッカーへの取り組みがあります。本当に車道に出て(車通りの少ない道)、裸足でプレーするのです。ビブスなどはないので、裸と、服を着ているチームとに分かれます。車が通ると、試合は中断。ボールが家に入ってしまうとベルを押して捕ってもらう。形だけでない、本当のストリートサッカーでした。最初は道路で裸足になること、裸足でボールを蹴ることに抵抗がある子どもたち。こわごわとプレーをしていました。
子どもの順応力はすごいですね。みるみる楽しみ、どんどんサッカーを楽しんで、面白いプレーを見せてくれました。最後は真っ黒になった足裏を見せて、記念撮影。ブラジル人の気持ちに触れた時間でした。
クルゼイロの育成施設「toca1」では、朝昼晩と食事が提供されます。ビュッフェ形式で各自が食べたいものを食べたいだけ取るスタイル。
朝は、欧米によくあるパンと飲み物、これにフルーツとハムが付いた軽いもの。
昼と夜は、お米、フェジョン(豆の煮込み、伝統的なブラジル料理)チキンや豚のローストや煮込み、サラダにフルーツ。アスリートに必要な全ての栄養素を(動物性・植物性たんぱく質、炭水化物、ビタミン、ミネラル等々)充分に摂取できる素晴らしい内容です。揚げ物はほとんど出てきません。アスリートが体を作るために特化した、最高の食事が毎回提供されるのです。
クルゼイロの選手たちは、本当によく食べます。そのせいか、がっしりとした体つきの選手ばかり。一方我ら日本子どもたちは、初めて見る?ブラジル料理に苦戦。お皿に少ししか盛りません。足りない分はこっそりお菓子で・・。
これでは体力が落ちてしまいます。子どもたちに「食べることもトレーニングだ」「いつもの家の食事とは違うけど、食べてみよう」と毎回、子供たちの食事の量をチェック。「それでは足りないよ、おかわりしよう」「緑のものが少ないね、フルーツか野菜を追加しよう」。毎回の食事がトレーニングですね。最初は少量しか食べれなかった子どもたちも、少しずつブラジル料理になれてきたのでしょうか、最後には笑顔で食事を摂れるようになりました。これもブラジルまで行ったからこそ体験できることだと思います。
クルゼイロは、遠く日本から来た子供たちにグラウンド外でもブラジルを体験してほしいという思いから、ショッピングモールへの買い物、ホームスタジアムであるミネイロンへのツアー、クラブスタッフの自宅でのホームパーティー、トップチームの練習見学に、プロ選手との交流など、イベントが目白押しです。これらは常にクラブのスタッフが同行してくれます。移動はすべてクラブのバス。子どもたちが危険な思いをさせない!という強い意志をいつも感じます。
さらに、子供たちにブラジルの試合の激しさ、熱さを感じてもらうため「ブラジルの試合を生で観戦させてあげたい」という思いから、プロの試合の観戦に行きました。コパドブラジルの観戦にも出かけました。クルゼイロの応援です。
サポーターの声や爆竹などは日本と違い、安全は自分で守らなければならない。これも子ども達にとって、良い経験になったのかもしれません。日本では味わうことの出来ない、刺激的な時間になりました。
ブラジル・クルゼイロへの遠征では、日本では経験しえない貴重な時間を過ごしました。我々を信じて送り出してくれた親御さん、本当にありがとうございます。そして温かく迎えてくれたクルゼイロのスタッフの支えがあって成り立ったブラジル遠征。参加した子どもたちは、最後まで頑張りました。毎晩ヒロコーチと個人面談を繰り返し、日々のトレーニングや行動を振り返ります。全員で少しでも良い時間にしようと、取り組みました。失敗と成功を繰り返しながら、ブラジルで過ごした時間は一生の宝物ですね。